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球節固定術のための低侵襲軟骨除去の検討(Farfan et al. 2020)

今回ご紹介するのは、球節固定術を低侵襲で行うために、関節を脱臼させずに軟骨を除去する手技と、掌側/底側のテンションバンドを小切開から設置する手技を屍体肢で検証した論文です。Farfan氏、Genton氏、Rossignol氏による研究で、*Veterinary Surgery*誌(2020年、49巻S1、O45-O53頁)に掲載されています。臨床例ではなく屍体を用いた実験的研究である点をあらかじめお断りしておきます。


### 研究の概要


球節固定術は、高度の変形性関節症、繋靱帯装置の破綻(両側種子骨骨折、繋靱帯断裂、遠位種子骨靱帯の断裂)、屈腱拘縮や弛緩、第一指骨や中手骨遠位の骨折などに対して行われ、いずれも快適な負重を回復して救命または繁殖供用を目指す術式であると記載されています。骨癒合を得るためには関節軟骨を可能な限り除去し、骨と骨の接触面を最大化することが必要とされます。


もっとも一般的な術式では、背側に長い切開を置き、外側側副靱帯を第三中手骨遠位と第一指骨から剥離し関節包を切離して球節を脱臼させます。これにより関節面が広く露出し、キュレットとオシレーティングソーで軟骨を除去し、軟骨下骨に多数の骨穿孔を行うことができます。またこの展開により、掌側/底側に1.25mmワイヤーの二重または1.7mmケーブルを8の字状に通してテンションバンドを作ることも可能になると記載されています。しかし著者らは、脱臼を伴うこの展開は必ずしも必要ではなく、侵襲が大きいぶん術後感染のリスクを高めるとしています。Richardsonにより、関節鏡下のバー処理と透視下の経関節ドリリングを組み合わせた低侵襲法が提案されているものの、この方法でどれだけの軟骨が除去できるのかについての報告はないと述べられています。そこで本研究では、(1)低侵襲な軟骨除去手技の確立と除去率の定量、(2)関節を脱臼させずにテンションバンドを設置する手技の記述、が目的とされました。


対象は9頭の屍体から得た12肢(前肢10・後肢2、ウォームブラッド7・スタンダードブレッド1・サラブレッド1、2〜29歳、450〜660kg)です。手技の要点は「スクリューによる関節の離開」にあります。球節の約4.5cm近位、総指伸腱の外側に切開を置き、透視・X線ガイド下に第三中手骨/中足骨を穿孔して90mmの5.5mm皮質骨スクリューを刺入します。背掌方向像では第一指骨の矢状溝を、側方像では第一指骨関節面の中央3分の1と掌側3分の1の境界を狙うのが理想の方向とされ、スクリュー先端のねじ山が関節腔内に2.5〜3山見えるまで進めると、関節がおよそ6mm離開し、4.5mmドリルの挿入と扇状の操作が容易になると記載されています。


離開させたうえで、内外側それぞれに小切開を置き、関節包を貫く3か所の刺切開(背側・中央・掌側/底側)からドリルを扇状に動かして軟骨を削り、掌側/底側の陥凹には別の切開からキュレット(10mmハットスプーン、25×8mmフォルクマン)を挿入して種子骨と顆部の軟骨を除去します。最後に背側から伸腱を割って矢状稜と矢状溝にキュレットを入れる、という流れです。結果として、全例が4か所(外側2・背側1・内側1)の切開から処置可能で、平均処置時間は34±5.8分でした。


除去された軟骨の割合は、プラニメトリによる計測で、第三中手骨/中足骨の関節面が66.8±7.6%、第一指骨が67.9±8.6%、2つの種子骨を合わせて59.5±11.1%でした。第三中手骨/中足骨と第一指骨の間、および内側と外側の間に有意差は認められていません。肉眼所見では、ドリルが軟骨下骨をわずかに貫くことが主に中手骨顆部でみられた一方、第一指骨は深い損傷を受けず、種子骨では軟骨下骨の露出はなかったと記載されています。


テンションバンドについては、6肢を用いて専用のカニューレとオブチュレーターを作製し、4か所の刺切開から1.7mmケーブルを設置する手技が検証されました。全例で設置が可能かつ再現性があり、X線・透視でケーブルが骨の掌側/底側面に密着し、たわみやループなく緊張がかかっていることが確認されたとされています。平均処置時間は13±3分でした。難所は遠位の切開からカニューレの先端を出すところで、骨膜起子やホーマン鉤を靴べらのように使う必要があったと記載されています。


考察では、繋関節・足根関節・手根関節の固定術に関する既報において軟骨除去率は34〜90%と幅があり、それらは関節固定を得るのに十分と判断されてきたことが紹介されています。ただしそれらの多くは低運動性関節を対象とした in vitro 研究であり、球節のような高運動性関節での臨床成績を反映しないかもしれないと注意が促されています。著者らは、球節でおよそ65.7±1.8%の軟骨除去が骨癒合を得るうえで許容できるのではないかと提案しつつ、これは今後の研究のたたき台であり、必要最小限の除去率と所要期間はまだ明らかにされていないとしています。また本法の限界として、軟骨下骨への骨穿孔(osteostixis)が行えない点を挙げ、ただしドリリング時に軟骨下骨が破られることが骨穿孔と同様の効果をもたらす可能性があると述べています。内側のドリリングは有意差こそ出なかったものの技術的により難しく、十分な軟骨除去ができるかは術者の熟練度に依存し得るとも記載されています。


### 日高での意味


この研究は屍体を用いた手技の検証であり、臨床成績を示すものではありません。ただ、球節固定術で問題になりやすいのが術後の感染とインプラント露出であることを踏まえると、「関節を脱臼させずに、4か所の小切開だけで軟骨を除去しテンションバンドまで設置できる」という方向性そのものが、生産地で救命を検討する際の将来的な選択肢に関わってきます。一方で、この方法で除去できる軟骨はおよそ6〜7割であり、それが球節のような高運動性関節で十分かどうかは本研究では確認されていない、という点も同時に押さえておく必要があります。低侵襲法の話題が出た際に、「まだ屍体での手技検証の段階である」と整理して伝えられることが、現時点での本論文の実用的な価値であると考えられます。


### 感想

神経再支配の際にもたびたび登場したフランスのRossignol獣医師らのチームの論文です。
このチームは革新的な論文を次々と発表しており、非常に素晴らしいチームです。

さて、論文の内容についてですが、昨年のスイスでのAOVETの講習にてこの方法を実際に講習内で実施する経験がありました。正直、難しいというのが感想です。
この手技ですべての工程を実施するためには複数回の練習が必要となりそうです

実際の症例では私はオープンな方法のみを選択してきました。
まだ、この方法を選択できる状態ではありませんが、今後のことも考え準備を進めておきたいと思います。


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**出典**:Farfan M, Genton M, Rossignol F. Ex vivo study of minimally invasive procedures for cartilage removal from the metacarpophalangeal or metatarsophalangeal joint and for fetlock tension band application. Vet Surg. 2020;49(Suppl 1):O45–O53. DOI: https://doi.org/10.1111/vsu.13374


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北海道で働く大動物獣医師

X:[@Steelma49143492](https://x.com/Steelma49143492)


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