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高度汚染された開放性球節脱臼_Haspeslagh2021

今回ご紹介するのは、高度に汚染された開放性の中足趾節関節(球節)脱臼を、二期的な治療で救命した1症例の報告です。Haspeslagh氏、Schauvliege氏、Martens氏によるベルギー・ゲント大学からの症例報告で、*Equine Veterinary Education*誌(2022年、34巻2号e78-e82頁)に掲載されています。


球節の脱臼は馬では比較的まれで、多くは閉鎖性であるとされています。既報の多くは長期の外固定による保存療法で、関節包が保たれていれば繁殖や乗用への予後は「fair」とされてきたと記載されています。開放性脱臼を含む症例集積も報告されているものの、そこでは組織損傷はさほど重度ではなく、また球節の関節固定術が行われた例はないと著者らは述べています。


症例は1歳のウォームブラッド牝馬、体重約400kg。柵を飛び越えた際に左後肢の中足趾節関節が内方に開放性脱臼し、捕獲されるまでの数分間、露出した中手骨(中足骨)遠位の顆部で負重したまま放牧地を走り続けたと記載されています。搬送時に患肢の固定や保護は行われず、投薬もされないまま来院しています。飼い主からは、可能な限りの手を尽くしてほしいという要望がありました。


麻酔下での精査により、矢状稜の軟骨にびらん性の損傷があり、露出した骨・軟骨・軟部組織が土と草で高度に汚染されていることが確認されました。球節の内側・外側の側副靱帯、および近位種子骨の内側・外側の側副靱帯がいずれも断裂し、関節包は完全に断裂して組織損傷と汚染のため大部分が判別できない状態であったと記載されています。一方で神経血管束、伸腱・屈腱、屈腱鞘、繋靱帯、遠位種子骨靱帯はいずれも触診・視診上は健常で、著明な失血もなく、X線検査でも骨折は認められていません。


関節機能の永続的な喪失は避けられず最終的に関節固定術が必要になると判断されましたが、汚染が高度で感染とインプラント破綻のリスクが高いことから、二期的な治療が選択されました。第一期では、生理食塩水による洗浄と器具・ガーゼによる異物除去を行い、関節包と側副靱帯の残存部を鋭的に切除し、関節鏡ポンプを用いた150mmHgの持続加圧下にリンゲル乳酸液で軟部組織を掻爬しています。遊離軟骨を小キュレットで除去したのち、用手的に整復してX線で確認し、皮膚を吸収性モノフィラメントの垂直マットレス縫合で閉鎖。旧関節腔にセフチオフル1gを注入し、蹄を中足骨と一直線に保つヒールサポートを組み込んだ遠位肢ギプス包帯を装着しています。反対肢には蹄葉炎予防としてシリコンパッド付きの嵩上げ蹄鉄が装着されました。抗菌薬(ペニシリン+ゲンタマイシン)とフェニルブタゾンが20日間投与され、入院期間中はアセプロマジンが経口投与されています。


ギプスは全身麻酔下で14日目と35日目に交換され、36日目に退院、56日目に立位でギプスが除去されました。この時点のX線で、球節周囲に中等度から高度の不規則な新生骨、関節腔の狭小化、近位種子骨の関節縁に中等度の不明瞭な新生骨が認められています。著者らは、この所見と馬が当初快適であったことから自然強直への期待を一時抱いたものの、数日後から跛行が増悪し(AAEP 4度まで)、当初の計画どおり受傷から63日目に関節固定術に進んだと記載しています。


第二期では、13穴の4.5mm広幅LCPを用いた中足趾節関節固定術が行われました。背外側に切開を置き、外側側副靱帯および外側近位種子骨の瘢痕組織を切離して球節を脱臼させ、中足骨遠位・第一指骨・両近位種子骨の残存軟骨をオシレーティングソーとキュレットで除去、2mmドリルで軟骨下骨に骨穿孔を行っています。種子骨はそれぞれ4.5mm皮質骨スクリューによりラグ法で中足骨遠位に固定。プレートは関節部で約10度屈曲させて第一指骨背側に固定し、近位のプレートホールに角度付きテンション装置を装着して関節面に圧迫を加えたうえで中足骨に固定しています。さらに4.5mm経関節スクリュー2本を背遠位から底近位方向に(内外側各1本)、1本を背近位から底遠位方向に外側から、それぞれラグ法で挿入し、術中はC-armで位置を確認したと記載されています。術後も同様にギプスと反対肢の嵩上げ蹄鉄が用いられ、14日目・35日目に交換、56日目に立位で除去。除去後は1か月の馬房休養、3週間の引き運動を経て小パドックへの放牧が許可されています。


経過としては、第一期の初回ギプス交換時に部分的な創離開と漿液膿性の分泌があり表在性の感染が疑われたものの、深部への瘻管はなく肉芽で充填されていたとされています。2回目の交換時には腫脹と分泌は消失していました。また術後約2週で反対側後肢の指動脈の拍動亢進がみられましたが、蹄葉炎の他の徴候はなく快適な負重が保たれています。関節固定術後は重大な合併症なく経過し、術後70日の最終検診では患肢の腫脹はやや残るものの正常に負重し、常歩・速歩ともに機械的跛行のみが残る状態でした。術後213日の電話聞き取りでは、快適に負重しているとの報告と、パドックでの自由運動の動画が飼い主から提供されたと記載されています。


考察では、高度に汚染された環境でインプラントを用いると感染とインプラントの安定性喪失をきたしやすいため二期的アプローチを選んだこと、第一期の目的は感染の排除と瘢痕組織による関節の部分的安定化にあったことが述べられています。高運動性関節である球節では自然強直は期待しにくいとされる一方、経皮ピンギプスによる自然強直の報告があり、それを選べば手術は一度で済んだ可能性にも触れられています。ただし経皮ピンギプスにはインプラントの緩みと感染のリスクが伴うため、二期的アプローチのほうが合併症リスクが低く臨床成績も良いと判断したとしています。一方で、この方法により本馬は計6回の全身麻酔を経験しており、これはリスクとみなし得るとも記載されています(うち4回はギプス交換のための短時間の麻酔)。搬送前に獣医師が患肢を保護・固定し初期疼痛管理を行うべきであった点にも言及されています。著者らは、飼い主に十分な意思があり、馬が長期の外固定期間を通じて快適でいられるならば、合併した開放性の球節脱臼であっても繁殖用として救命し得ることを本症例は示していると結論づけています。


### 日高での意味


放牧地での事故による開放性の球節脱臼は頻度の高い損傷ではありませんが、遭遇した場合、その場での判断が転帰を大きく左右します。本症例で押さえておきたい点は3つあると考えられます。第一に、著者らが「汚染の高度な創に一期的にインプラントを入れない」という判断をしていること。第二に、その二期的アプローチが、第一期の外固定56日+第二期の外固定56日という、非常に長い管理期間を必要としたこと。第三に、繁殖価値のある個体で飼い主の意思が強い場合に限って成立する選択肢である、と著者ら自身が条件づけて述べていることです。生産地で同様の相談を受けた際、「救命できる可能性はあるが、半年近い管理と複数回の全身麻酔、反対肢の蹄葉炎リスクを伴う」という枠組みで説明する材料になり得ると考えられます。なお本報告は1症例であり、一般化はできません。


### 感想

なかなか激しい症例報告です。
それにしてもすさまじい執念を感じる症例報告でした。

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**出典**:Haspeslagh M, Schauvliege S, Martens A. Successful treatment of a severely contaminated open metatarsophalangeal joint luxation by arthrodesis. Equine Vet Educ. 2022;34(2):e78–e82. DOI: https://doi.org/10.1111/eve.13540


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北海道で働く大動物獣医師

X:[@Steelma49143492](https://x.com/Steelma49143492)


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