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頸椎ファセット注射の臨床成績 (Brimingham 2010)

 


今回から頸椎注射に関する論文を4本、順番にご紹介します。
1本目は、頸椎の関節(ファセット関節)にステロイドを注射された馬が、その後どうなったかを飼い主への聞き取りでまとめた報告です。Birminghamらが2010年に Equine Veterinary Education に発表したもので、超音波ガイド下の頸椎ファセット関節注射を受けた馬124頭の記録を後ろ向きに調べています。

背景として著者らは、頸椎狭窄性脊髄症(CSM)が馬の非感染性の脊髄性運動失調の最大の原因であること、頸椎ファセット関節注射が比較的新しい手技でありながら、その効果を検討した報告が乏しいことを挙げています。注射の適応として論文が想定しているのは、軽度から中等度の神経症状(5段階中のグレード2〜3)があり、立位側方のX線像で中等度以上の変性が見られ、かつEPM(馬原虫性脊髄脳炎)が陰性、または治療に反応しなかった馬です。

研究の概要

対象は、オハイオ州立大学の教育病院とシカゴの Merritt Equine で1999〜2005年に頸椎X線検査と超音波ガイド下のファセット関節注射を受けた124頭です。年齢は1〜26歳で、雄が73.4%を占めます。品種はウォームブラッドが44頭、クォーターホースが25頭、サラブレッドが17頭などで、競技種目は馬場馬術、障害飛越、その他と、不明が半数以上でした。

来院時の主訴は、運動失調が33頭(26.6%)、原因不明の跛行が28頭(22.6%)、頸部のこわばりが24頭(19.3%)、パフォーマンス低下が14頭(11.3%)、不明が25頭でした。頸椎X線像を確認できた74頭のグレード分類は、軽度が7頭、中等度が38頭、高度が29頭です。

注射は全頭でメチルプレドニゾロン酢酸エステル(1関節あたり40〜160 mg)を基本に、イソフルプレドン、Sarapin、ヒアルロン酸、アミカシンのいずれかを組み合わせたものでした。用量や組み合わせは施設・術者ごとに揃っていません。1回の処置で済んだのが91頭(73.4%)、2回行ったのが33頭(26.6%)です。

転帰は、連絡がついて協力が得られた飼い主59名への電話調査で集められました。

結果

59頭のうち、「通常の運動機能に戻った」が19頭(32.2%)、「改善した」が23頭(39.0%)で、合わせて71.2%でした。「変化なし」は15頭(25.4%)です。改善した23頭の改善度は、飼い主の申告で25%が5頭、50%が6頭、75%が12頭でした。

効果の持続期間は、改善または回復した42頭のうち、1週間〜1か月が14頭(33.3%)、1.5〜6か月が9頭(21.4%)、8か月〜1年が7頭(16.7%)、2〜5年が5頭(11.9%)、覚えていないが7頭(16.7%)でした。年齢、品種、X線グレードなど、検討した変数のいずれも転帰とは有意に関連していませんでした。

著者らの解釈

著者らは、効果の持続が短い馬が多く、2年以上続いたのは5頭にとどまることから、この注射は根治的ではなく緩和的なものではないかと述べています。また、転帰が飼い主の主観に基づく電話調査で、注射前後に神経学的検査や跛行検査を同じ条件で行った客観的な比較がないこと、治療内容がばらばらであることを限界として認めています。結論は「有望な治療法だが、エビデンスに基づく医療の基準を満たすだけの客観的データはまだない」というものです。

日高での意味

71.2%という数字は目を引きますが、対照群のない、飼い主の主観に基づく値であることを割り引いて読む必要があります。対象は成馬が中心で、サラブレッドは17頭にすぎません。競走馬の育成段階で見られる頸部の問題にそのまま当てはまる成績ではありません。一方で、頸椎注射が臨床で使われる根拠として長く引用されてきた論文であり、次回以降で取り上げる頸椎関節の論文も、この報告を引用しています。注射の「効果」をどこまで確かめられているのかを、まずここで押さえておきたいと思います。

感想

頸椎の背側関節の骨増生に対する関節内注射の成績です。
この問題は私が働くエリアでは腰フラとして認知されることが多いと考えています。

この論文での効果判定はあくまでも聞き取りであり、用途も様々です。
この結果をもってすぐにこの手技を強力に推し進めていきたいわけではありません。

しかし、この手技はそれほど難しくなく、私が実際に実施した感想としても取り入れるのは簡単だと思っています。
そのため、今後紹介する論文と合わせて、適応症例に遭遇した場合はぜひ実施していきたいと考えています。


出典
Birmingham SSW, Reed SM, Mattoon JS, Saville WJ. Qualitative assessment of corticosteroid cervical articular facet injection in symptomatic horses. Equine Veterinary Education. 2010;22(2):77–82. doi:10.2746/095777309X477852


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