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仔馬の脛骨近位成長板骨折に対する海綿骨スクリュー固定4例(Wagner et al. 1984)

 


今回ご紹介するのは、生後1日〜3週齢の仔馬4頭に生じた脛骨近位成長板骨折(いずれもソルター・ハリスⅡ型)を、海綿骨スクリューで固定した症例報告です。Wagner氏、DeBowes氏、Grant氏、Kaneps氏、Watrous氏による報告で、*Journal of the American Veterinary Medical Association*誌(1984年、184巻6号688-691頁)に掲載されています。2年間に治療した4例の固定法をまとめたもので、脛骨近位成長板骨折の固定を扱った古典の一つです。


 症例の概要


症例はいずれも雌の仔馬4頭で、アメリカン・サドルホース1頭(3週齢)とクォーターホース3頭(1日齢・9日齢・10日齢)です。9日齢の1頭は母馬に蹴られて受傷し、10日齢の1頭も蹴られたことが疑われています。1日齢の1頭は生後数時間で後肢の非負重跛行が見つかりました。全例で骨折部周囲の軟部組織の腫脹・挫傷・出血が強く、ただし開放骨折はありませんでした。


著者らは、この部位の骨折の典型像をⅡ型としています。成長板を内側で通り、外側へ向かって骨幹端の三角形の骨片が外側の骨端に付いたままになる形で、肢の外側からの外力で内側に張力、外側に剪断力が生じて起こると説明されています。症状は非負重跛行、膝(スティフル)の腫脹、骨折部より遠位の外反変形です。


固定は6.5mmの海綿骨スクリューで行われました。


- **内側アプローチ(3頭)**:大腿骨遠位から脛骨中央部まで内側に弧状の皮膚切開を置き、手動で整復します。4.5mmのドリルで脛骨内側から成長板を約45度の角度で横切る孔を作り(関節軟骨に達する数mm手前で止める)、骨幹端側のみ6.5mmのタップを切ります。骨端の軟らかい海綿骨にはタップは不要でした。ねじ山長16mmまたは32mmの、シャフトが平滑な海綿骨スクリューを使い、2本目で整復を維持し、3本目(最遠位)は骨の長軸に垂直に外側の骨幹端骨片を捉えます。

- **外側アプローチ(1頭)**:この症例は外側の骨幹端骨片がやや大きく、長指伸筋と外側指伸筋の筋腹の間から進入して、骨片を貫き近位脛骨骨幹端に至る海綿骨スクリュー(ラグ)2本を平行に垂直方向へ入れています。


スクリューヘッドの下にワッシャーを入れたのは2例(ヘッドが軟らかい骨に潜り込むのを防ぐため)で、入れなかった1例(10日齢の症例)では術後2週でヘッドの陥入が確認されました。術前後にプロカインペニシリン(2万単位/kg)を術後5日間、フェニルブタゾン4.4mg/kgの経口投与が5日間行われています。術創の汚染を防ぐため、臍帯テープのループを創縁に並べ、ガーゼを編み込んで固定するステント式の包帯が用いられています。


術後は全頭が直後から負重できました。一方で、以下の問題が記載されています。


- 3頭で術創下に漿液腫が生じ、抜糸1本で排液

- 1頭(1日齢、外側アプローチ)で股・飛節の褥瘡

- 術後2週のX線で、外側アプローチの症例は外側にやや虚脱して軽度の外反、別の症例では最遠位のスクリューが曲がって整復維持に寄与していない状態(整復自体は良好)

- スクリューの抜去は、線維化と石灰化のため困難。うち1頭は抜去時の軟部組織損傷で治癒が遅れた

- ワッシャーなしの1頭は、ヘッドが陥入して抜去不能(術後2.5か月のX線で骨折は治癒)。スクリューは残置


抜去の経過は、症例1が60日入院後に抜去、症例2は42日で退院後90日で抜去(治癒確認)、症例3は30日で退院後50日で抜去(問題なし)、症例4は術後20日で退院し抜去なしでした。


追跡は術後8〜18か月に、飼い主へ連絡して確認したものです。全頭で正常に発育し、**目視で**明らかな肢の変形や左右差はなかったと記載されています。最初の3頭は趣味乗馬として使われ跛行はなく、最後の1頭は放牧で自由運動中、とされています。


考察では、中央部で成長板を横切ったスクリュー(3頭)は成長を抑えているようには見えなかったとされ、その理由として、Ⅱ型では成長板の胚芽層(増殖層)が保たれ、骨端側の血行が損なわれていなければ予後は良いこと、と説明されています。また、この固定法が適切だったのは、症例が1〜21日齢の華奢な品種の小さな仔馬だったためで、大型品種や日齢の進んだ仔馬ではスクリュー単独では不十分かもしれないと明記されています。他の方法としては、White & Wheat(1975)の拡張・圧迫法と、ダイナミックコンプレッションプレート(White 1982)が挙げられています。


日高での意味


生産地で扱う脛骨近位成長板骨折の仔馬の多くは、生後間もない軽種です。この報告の価値は、最小限の金属で足りたという点以上に、**その成立条件を著者自身が限定している**点にあると考えます。対象は1〜21日齢で、体格が小さく、骨片の血行が保たれていたⅡ型の閉鎖骨折でした。成長板を横切るスクリューで成長障害が目立たなかったという所見も、追跡が飼い主への聞き取りと目視による評価であり、X線での計測や肢長の測定ではない点を割り引く必要があります。


実務的に参考になるのは、合併症の記載です。ワッシャーの有無でヘッドの陥入が起きたこと、抜去の際に線維化・石灰化で手間取ったこと、漿液腫が4頭中3頭で出たことは、「簡素な固定」という印象だけで紹介判断をしないための材料になります。また、骨折の型や月齢が合うかどうかは、紹介の判断で最初に確認する点だと考えられます。なお4頭の報告であり、一般化はできません。


感想

螺子だけで固定する方法の論文です。強度が・・・・。
何度も寝起きし、飛び跳ねる。そんなサラブレッドの仔馬ではこの方法だと安定性が低いのだと思います。
現在の推奨方法のT-LCPでの固定から見ると強度が不安ですよね。

**出典**:Wagner PC, DeBowes RM, Grant BD, Kaneps AJ, Watrous BJ. Cancellous bone screws for repair of proximal growth plate fractures of the tibia in foals. J Am Vet Med Assoc. 1984;184(6):688–691.(PMID: 6725102)


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北海道で働く大動物獣医師

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